あめあめ ふれふれ ~校閲の鬼~番外

子ども用に童謡のCDを購入しました。

最近の歌ではなく、大正や昭和初期の昔の歌まで入っているもので、
歌っているのは、童謡歌手やソプラノ歌手の方々。

何気なく聞いていたのですが、ある歌がふと耳に止まりました

誰もが知っている、あめふり。(北原白秋作詞、中山晋平作曲)

♬あめあめふれふれ かあさんが♪

この後です。

じゃのめでおむかい うれしいな

おむかい?

おむか「え」じゃなくて・・・?と思い、聞きなおしましたが、やはり「おむかい」と聞こえます。

歌詞カードを見ると、確かに「おむかい」とありました。

今までずっと、「おむかえ」だと思っていたのですが、インターネットで歌詞を検索してみると、

「おむかえ」とあるものも多いのですが、「おむかい」と出ているものもあります。

むむ、これは・・・

記憶の中を探り、出てきたのが「銀の匙」。

中勘助さんによる小説(随筆のように思いますが)で、明治の末に執筆されたものですが、
その中では、人を迎えに行くことが「むかい」と書かれています。

考えてみるに、元の動詞は「迎える」ではなく、「迎ふ(むかふ)」で、
その名詞形「お迎ひ(おむかひ)」を「おむかい」と発音したものでしょう。

現代では、「迎える」の名詞形として「お迎え」に変化しているようですが。

ここで、思い出したことが一つあります。

NHK Eテレの乳幼児向け番組「いないいないばあっ!」で、うーたんが
「じゃのめでおむかい」
と歌っていたのです。
(注:2024年現在は、キャラクターが変更されています。)

うーたんの声は甲高く、言葉のおぼつかない子どもの話し方を真似て、
「おむかい」
と発音しているのかと思っていましたが、違いました!

うーたんが正しかった!!

いや、正しいのは、うーたんではなく、番組担当プロデューサー(ディレクター)さんか?

同じNHKでも、「おかあさんといっしょ」では、「おむかえ」と歌っていたので、
これはプロデューサー(ディレクター)の差か、それとも、うーたんが正しい歌詞を知っていたのか。

そういえば、ラインで、夫は、お迎えに行くことを
「むかいにいく」
と表記します。

誤記なのか?と思っていましたが、津軽弁には、「迎ふ」の使用が残っているのかもしれません。

もう一つ、思い出したことがあります。

新聞社で校閲をされていたOさんが、以前(といっても20年以上前)、「つなげる」という言葉について

これは東京の言い方じゃ(つまり、新聞や公用語としての語句としてはふさわしくない)

「つなぐ」が正しい

と、苦い顔をしていました。

つなぐ → つなげる

迎ふ → 迎える 

時代が下り、主流は五段活用から下二段活用になっているのでしょうか。

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